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| 2004年夏お元気ですか 第26号 2004年7月 |
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用度課長 入山 功
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| 今から20年以上も前になるが、親の仕送りで生活する学生の分際でありながら |
| タバコ無しでは考えられない毎日を過ごしていた。自分の素晴らしく優柔不断な性格 |
| からか友人に誘われると断ることもせず学業をおろそかにして、徹夜のマージャン。 |
| 4畳半の狭い部屋の中はいつもタバコの煙で白く一晩中曇っていた。 |
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私たちは、安いトリスウィスキー(サントリーホワイト |
| は、当時の仲間内では高級品)を酌み交わしな |
| がら、深夜、いや朝までの語り合い。そこにつまみ |
| は無くてもタバコだけは何時も手の届くところにあ |
| った。時々、金が無くてタバコが買えなくなると、 |
| 山積の吸殻の中から長いものを選び、きれいに |
| 吸い尽くしたこともある。それ程私とタバコとは |
| 親密な間柄であった。 |
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| 社会人になってからもこの親密な関係は、20年程続いた。 |
| ところが、この関係に終止符がうたれる時が思いがけなくやってきた。それは今から |
| 10年以上も前の大晦日のこと、結構重い風邪をひいていたが咳き込みながらもめ |
| げずにあいかわらずタバコを吸っていた。紅白歌合戦が終わり慣例の2年参りに近 |
| くの神社(曾木神社)へ出かけ参拝者用の焚き火にあたりながら、当然の如くタバコ |
| に火をつけ吸い始めた。が、妙に苦い味がし、咳き込んで苦しくて仕方が無い。 |
| それでもまだ吸おうとしている自分がふと哀れに思え『こんなものヤメテシマエ!』と、 |
| 即座にポケットの中の残りのタバコを焚き火の中に投げ込んだ。 |
| これが私の最後の一服だった。 |
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| その後、正月三箇日を過ぎても不思議と吸いたくならず今日まで過ごしている。 |
| 今では食べ物は美味いし、ビールはといえば勿論季節到来お察しのとおりである。 |
| 何よりずっと悩みの種だった偏頭痛が薬も使わずに消えた。 |
| タバコを吸う事で収縮していた血管が、タバコを止めることで拡張し脳へ血流が良く |
| なるらしい。タバコを止めることでこんな副産物が得られるとは思いもしなかった。 |
| 当時私は、毎日のように頭痛薬にお世話になっていたから本当に良かったと思う。 |
| 二度とあんな偏頭痛に苦しみたくない。美味しい食べ物、美味いビールとは末永く |
| お付き合いしたいものだと思っている。 |
| だから、今では、私はもうタバコが吸えません。 |
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