産婦人科医長  伊吹令二

 不妊症―子供のできない人は世の中に意外と多いものです。一般的に結婚して一年以内に約80%の人が、二年以内に約90%の人が妊娠していて、それ以後の妊娠率はきわめて低くなっています。当院婦人科外来に診察にこられる人の多くは、結婚後5年から10年で、年齢では30〜33歳の女性が一番多いようです。そのうち、原発性不妊症といって過去に一度も妊娠したことのない女性が75%、続発性不妊症といって過去に一度以上妊娠経験のある女性が25%です。不妊原因を女性因子、男性因子に分けると、2:1くらいの割合です。このような方々にさまざまな検査、治療を行い、それでも残念ながら妊娠できないカップルが体外受精の適応となります。
 体外受精―胚移植法は「これ以外の医療行為によっては妊娠成立の見込みがないと判断されるものを対象とする」とされています。、具体的には卵管性不妊、乏精子症、免疫性不妊症、原因不明不妊症や不妊原因に対する治療を一定期間行っても妊娠に至らない難治性不妊症も適応となります。しかし、この技術を用いても受精が起こらない症例が存在することも明らかになり(受精障害など)、さらに高度な治療技術である顕微授精が開発されました。この方法では無精子症と診断された症例にさえ、精巣上体や精巣中から精子や精母細胞を見つけ出し、受精を成功させています。最近では卵の培養液の改良も進み、卵を胚盤胞という、着床直前の段階にまで培養できるようになり妊娠率の更なる向上や多胎妊娠の予防が期待されています。 
治療法はどんどん発達してきているのですが、体外受精などの不妊治療は費用がかかり、保険がきかないことも多く、それが治療の妨げとなってきました。しかし、昨年4月から不妊治療の助成金制度がスタートし、わずかながら自治体からの援助が得られるようになりました。
今後も私たち産婦人科医は患者さんと一緒に悩み、考え、肉体的、経済的負担がより少ない援助で、妊娠、分娩が実現するのを目標として日夜努力していきたいと考えています。






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