流産の最近の話題

周産期小児センター長兼産婦人科主任医長
矢崎 千秋


 流産は全妊娠の約15%におきる産科では非常に頻度の高い異常です。流産の原因については、近年いろいろと新しいことが分かってきました。今回はそれをご紹介いたします。
 以前から流産の原因については受精卵の異常が一番多いことが分かっていました。5〜6割程度が染色体の異常とされています。染色体の数が多いとか少ないとか、これは避けることはできず、治療もできません。その他には子宮筋腫や子宮の奇形など母体因子があげられますが、局所の感染症や血液凝固異常によっても流産がおこります。
 特に最近脚光を浴びているのが、細菌性腟症といって腟の中に細菌が感染している場合です。性交渉や循環式の公衆浴場などでも感染する危険性があるといわれており、流早産のおそれがある人は注意が必要です。細菌の種類もいくつか分かってきています。嫌気性菌やウレアプラズマ、マイコプラズマなど男性の尿道に良くいる菌などです。以前は子宮の出口が弱いためと思われていた流産も実はこの細菌性腟症によるものだと考えられるようになってきました。細菌により子宮頚管が軟らかくなったり、破水しやすくなったり、子宮収縮が起きやすくなったりします。したがって、治療には子宮収縮抑制薬の他に抗菌薬が使用されますが、腟錠や経口錠など胎児には影響のないものが使われます。
 また、何度も流産をくり返す人の中には血液凝固異常を持っている人が高率に見つかることも分かってきました。これは血液が固まりやすくなる病気で先天的なものも含まれますが、抗リン脂質抗体症候群といって自己免疫性の病気のこともあります。血液が凝固しやすくなるために、胎盤の中に血栓ができて流産するというのです。治療には、血液凝固を弱めるヘパリンとか少量のアスピリンや副腎皮質ステロイドホルモンなどが使われて、良い結果がでているようです。







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